数字で見る海と海底

海ってどんなところだろう

海の底はどうなっているんだろう

さまざまな数字に注目すると、海と海底の不思議が見えてきます



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1.028 g/m3

世界で最も重い海水の密度は、1.028 g/m3

 

海水の密度(重さ)は、海水の温度と塩分によって変わります。冷たいほど重く、温かいほど軽くなり、そして、しょっぱい海水ほど重くなります。

つまり、冷たく高塩分の海水が最も密度が高く、最も重い海水の密度は、1立方メートルあたり1.028 グラム(1.028 g/ m3)であることが知られています。

 

そのような重い海水は、地球上のどこにあるのでしょうか。

両極域が世界で最も温度が低く大西洋の亜熱帯が最も塩分が高いというのは、以前解説したとおりです。それに加えて、大西洋の西側には、メキシコ湾流と呼ばれる暖流(太平洋の黒潮に相当)とそれに続く北大西洋海流が南から北へ流れており、亜熱帯の高塩分の海水を高緯度に運んでいます。その結果、グリーンランド沖の北大西洋で重い海水が作られます。

一方、南極の周辺には海氷(一般的には流氷という)が沢山浮いていますが、これらは実は真水が氷になったものです。つまり、海水から海氷が作られる時に余った塩分は、海水に濃集するため、ここでも重い海水が作られます。南極周辺で最も重い海水は、ロス海・ウェッデル海・アデリーランド沖で主に作られていることが知られています。

 

重い海水は、地球の重力に引かれて海洋深層に沈んでゆきます。そして、そのまま全世界の海洋を、ゆっくりとですが、ぐるりと一周回って循環しています。

このような北大西洋と南極を起点とする海洋の “熱塩循環” は、地球の環境変動もさることながら、海底資源の形成にも大きな役割を果たしています。



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43億年

海ができ、海水が塩っぱくなったのは、地球形成最終段階の43億年前

 

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初期太陽系で、隕石や小惑星が沢山衝突し集まって地球ができました。その、できたての地球の冷却が進行しマグマオーシャンが冷え固まると、一次大気中の水蒸気が雨となって地表(固結直後の地殻)に降り注いで海となりました。


実は、この時降り注いだ雨は、いわゆる「酸性雨」であったと考えられています。塩酸などの酸は、色々な固体を溶かして水溶液にする性質があります。塩酸などを含んだ酸性の雨によって地殻(岩石)の一部が溶けることにより、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、リン、カリウム、鉄などが海水に溶けし出しました。

そして、ナトリウムやマグネシウムは塩酸の塩素と結びついて「塩」を作り、残りの水素は水から取り去られます(中和)。アルミニウムは海水が中和されたことで、沈殿したとされています。そのほか、大気中の炭酸ガスが海水に溶け込み、カルシウムやマグネシウムと結びついて炭酸塩(石灰岩)となって沈殿します。

 

最終的に、水に溶けやすい塩化ナトリウムなどが海水中に残り、現在の海水の成分に近くなったと考えられています。



3.0〜3.7%

海水の塩っぱさ(塩分)は、3.0〜3.7%

 

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塩っぱさは場所や深さによって違います。特に差が大きいのは海面付近の海水です。北極付近が最も低く、亜熱帯(北緯および南緯20〜30度付近)が高く、特に大西洋の亜熱帯が最も高いことが、2000年以降の国際観測プロジェクトによって明らかになりました。

このような海面付近の塩分の差は、海水の蒸発による塩分上昇や、降水や河川などからの淡水の流れ込みによる塩分低下のバランスの結果として生じます。

一方、海に深く潜るにしたがって、塩分を変化させる要因は少なくなります。そのため、潜れば潜るほど地球全体の平均値である3.5%に近づき、海底付近では場所による塩分の差はほとんど無くなります。

 

3.0〜3.7%という差は人間にとって僅かなものですが、0.1%の違いでも地球の気候を変動させてしまうことがあるので、「結構差がある」と言えるでしょう。



1海里

地球表面上で緯度1分に相当する長さ(1海里)は、1,852 m

 

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海での距離の基準である海里(ノーティカルマイル: nm)は、このように定義されています。地球一周の360分の1が「緯度1度に相当する長さ」、そのさらに60分の1が「緯度1分に相当する長さ」です。北極と南極を通って子午線上をぐるっと一周する長さは40,000 kmですので、40,000/360 = 111.111 kmが緯度1度の長さとなり、さらに、111.111/60 = 1.85185 km(1,852 m)が1海里(1 nm)ということになります。


海底鉱物資源の開発にとって鍵となる排他的経済水域は、沿岸から200海里までの範囲と決められています。200海里 = 1.85185 x 200 = 370.37 kmであり、例えば、南鳥島を取り囲む排他的経済水域の面積は、半径370.37 kmの円の面積に近似でき、370.37 x 370.37 x 3.14 = 430,726 km²となります。日本の国土面積である約378,000 km²と比較すれば、南鳥島周辺の排他的経済水域がいかに広大で、重要な場所であるかが想像できますね。

 

ちなみに、千葉工大から直線距離で1,852 m離れた場所には、JR総武線の東船橋駅、谷津干潟、船橋競馬場があります。歩いて行くにはちょっと遠いですが、船で行くには丁度良い距離でしょうか。



22.2 km

研究調査船が省エネ航行するときの速さは、時速22.2 km

 

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船が1時間に 1海里 進むことのできる速さを、1ノット(knot)といいます。つまり1ノットは、時速1.852 kmです。研究調査船の船員さんに聞くと、多くの研究調査船は、12ノットの時に最も燃費良く走れるのだそうです。1.852 x 12 = 22.2 kmですので、船の省エネ航行スピードは “それほど速くない” ということが分かります。自転車に乗って全速力で追いかければ、人によっては追い抜くことも可能でしょう。

自転車競技「スプリント」の最高速度は、なんと時速70 kmにも達するそうです。研究調査船のスピードは、全速力(約16ノット)ですら競輪選手のスピードには遠く及びません。

 

ところで、南鳥島は、東京からおよそ1,800 km離れています。12ノットで走る船で南鳥島に行くには、1,800/22.2 = 約81時間もかかるのです。とは言え、丸3日ちょっとの間、ずっと自転車を漕ぎ続けるのはさすがに不可能・・・。


こう考えると、船は大きな海を自由に行き来するためにとても便利な乗り物だ、と実感することができます。





7.4 km

日本の南を流れる黒潮のスピードは、時速7.4 km

 

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黒潮は、沖縄諸島の西の東シナ海を北上し、九州の南のトカラ海峡から太平洋へ流れ出て、四国や本州の南岸を東へと流れています。世界の海の表面を流れる海流の中でも最大級の大きさと速さを誇り、最も速く流れるところで4ノット(時速7.4 km)のスピードに達します。研究調査船が省エネ航行する時のスピード1/3と考えれば、世界最大級という黒潮の規模感が理解できます。

 

そんな黒潮は、北太平洋を時計回りに大きく循環する「北太平洋亜熱帯循環」と呼ばれる表層海水の流れの一部です。赤道域に集中する太陽から受けた熱(実際には温められた海水)を中緯度域に運ぶという、大事な役目を担っています。

スピードの速い黒潮によって、地球表面の温度が効率的に平均化されているのですね。


東京湾を出港して南の海域の調査に向かう時には、必ず強い黒潮を横切らなくてはいけません。船の揺れに身体が慣れないうちに黒潮を横切るのは、船酔いがさらに酷くなるので嫌、という人が大半です。

しかし、黒潮は地球の大気海洋の大循環システムにとっての主役なのだ、と思えば、辛い船酔いにも耐えられるでしょう(それとこれとは話は別、という説もあります・・・)。



30℃と0℃

2021年の世界の平均海面水温は、最高値が30℃、最低値が0

 

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太陽から受ける熱は、赤道付近の低緯度域では狭い範囲に集中し、極付近の高緯度域では広い範囲に拡散します。その影響で海面付近の海水温は、赤道付近で高く、南北に向かって緯度が高くなるにつれ下がり、両極域が最も低くなります。

赤道付近の中でも特に、太平洋南西部に位置するニューギニア島の北の海域が最も水温が高く、2021年は平均で約30℃に達していました。中緯度域の平均水温は20〜25℃で、北半球のほうが南半球よりも高い傾向があります。一方、極域の平均水温は約0℃で、場所による差はあまりありません。

千葉工業大学が創立した1942年(当時は興亜工業大学)の平均水温の最高値は、現在と同じニューギニア島の北域で、現在より1℃低い約29℃でした。

平均水温は年々上昇しており、地球温暖化を示す証拠のひとつです。

 

さて、2011年に発表された研究によって、約1億4200万〜1億2800万年前(白亜紀初期)には、北緯15°から20°の平均水温が32℃で、現在より5℃高かったことが明らかにされています。さらに、当時の高緯度(南緯53°)の平均水温は26℃で、南北の温度差が少なかったことも示されました。

このような超温暖期の海では、暖かく軽い海水が表層に、冷たく重い海水が深海に留まり、海水の密度バランスが保たれた結果、深さ方向の海水の循環がストップして、海底付近が無酸素状態になっていたと考えられています。

 

超温暖期の無酸素状態の海底では、熱水活動によって形成・沈殿した金属の硫化物は、酸化して朽ちることがありません。その結果、大規模に海底熱水鉱床が発達し、かつ、それらが保存されていたということが、2013年に発表された研究によって明らかになっています。

地球表面の環境の変化が、海底資源の成り立ちに大きな影響を与えていたのです。