プロジェクト
レアアース泥の成因解明
資源の探査を行うにあたって、その資源が「いつ」「どこで」「どのように」できたのかを知ることは非常に重要です。私たちは、南鳥島をはじめとした太平洋全域に分布するレアアース泥の高精度化学分析・同位体分析・年代決定を網羅的に行うことで、その成因について解明しようとしています。その結果、高いレアアース品位を持つレアアース泥の生成には、地球環境や海洋循環の変動が大きく関わっていることが明らかになってきました。
南鳥島の海底には、レアアース品位が7,000 ppmに達する「超高濃度レアアース泥」が存在しています。この超高濃度レアアース泥には、魚類の歯や骨片を構成する「アパタイト(リン酸カルシウム)」が大量に含まれていますが、そのレアアース含有量は20,000 ppm(2%)を超える高い値であることが分かりました。この大量のアパタイトの沈積がいつ起こったのかを明らかにするために、私たちは魚の歯の化石(イクチオリス)と海水中の極微量元素であるオスミウム(Os)の同位体比を組み合わせた年代決定を行いました。その結果,超高濃度レアアース泥は約3,450万年前に生成したことを突き止めました。
この時代は、地球全体が温暖な気候から寒冷な気候へと急激に切り替わった時期として知られています。この気候モードの変化により、海洋循環が活発化して深海底を流れる底層流が強化されました。そして、底層流が巨大な海山にぶつかり湧昇流を発生させ、大量の栄養塩を表層にもたらしたことで、海山周辺で魚類が急激に増えたと考えられます。その結果、魚の骨が大量に海底に堆積し、超高濃度レアアース泥が生成しました。南鳥島を含む現在の北西太平洋から中央太平洋にかけては、大きな海山が多数存在するため、これらの海山の周辺を探査することで新たな超高濃度レアアース泥が発見できると期待されます。
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『南鳥島沖の「超高濃度レアアース泥」は地球寒冷化で生まれた』 (2020年6月18日 プレスリリース)