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2025.12.12論文・研究

浅見主任研究員らの原著論文が Scientific Reports 誌に掲載されました

浅見主任研究員が筆頭著者を、加藤所長が共著者を務める原著論文が Scientific Reports 誌に掲載されました。


現代のカンボジアを中心とする地域には、9世紀から15世紀にかけてクメール王朝が存在していました。クメール王朝はアンコール・ワットを始めとする多くの建造物(クメール遺跡)を建築し、現在ではクメール遺跡やその周辺ではしばしば製鉄スラグ(鉱石を溶かした際に出るガラス状の副産物)が見つかります。

本研究では、カンボジア北部のスラグ塚から採取したスラグと鉱石片の化学組成から、10世紀から14世紀にかけての研究地域における製鉄技術の変遷を明らかにしました。まず、クメール王朝が最盛期に向かう10世紀末から最盛期の13世紀にかけては、鉄鉱石としてラテライト(風化土壌)とアンバー(鉄酸化物)、添加剤としてマンガン酸化物と硫化物が使われていました。ラテライト以外の鉱石と添加剤は海底の熱水活動によって形成されたものであり、過去の海洋底の岩石が分布する調査地域周辺から調達されたと考えられます。マンガン酸化物と硫化物の添加により、質の高い鉄を高い回収率で生産していたと推測されます。

一方で、クメール王朝が衰退し調査地域が隣国に占領された14世紀になると鉄鉱石としてラテライトと磁鉄鉱のみを用いた、シンプルで鉄の回収率が低い製鉄が行われるようになり、高度な製鉄技術は失われてしまいました。本研究により、クメール王朝の興隆と関連した製鉄レシピの変化が初めて明らかになりました。


論文は以下のリンクよりご覧いただけます。

https://www.nature.com/articles/s41598-025-27581-x