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コラム2022.06.03

ORCeNGにある、地味だけどスゴイやつ

ORCeNGには最新鋭の分析装置や実験室が完備されていますが、その中でもひときわ “地味に” たたずむ・・・,でもとても便利な装置をご紹介します。

その名も、岩石薄片撮影装置です。(名前も地味・・・)


筆者がこの装置に出会ったのは、JOIDES Resolution号(ジョイデス・レゾリューション号)という深海掘削船の船内でした。

海底を掘削して採取した岩石は、船上で詳しく観察します。肉眼だけでなく、岩石薄片という30ミクロン程度にスライスしたもの(実際には、スライドガラスに貼り付けた岩石片を削って薄くする)を作り、偏光顕微鏡も使って観察します。JOIDES Resolution号の船内にあったこの装置は、岩石薄片の全体をカメラで撮影するためのものですが、ただ可視光で撮影するのではなく、偏光顕微鏡で観察する時の光の状態を作り出して撮影することができるように工夫されていました。


仕組みは単純で、2枚の偏光板が「光源と薄片の間」と「薄片とカメラの間」に取り付けられています。光源・薄片・2枚の偏光板の位置関係は、偏光顕微鏡と全く同じです。ただし、偏光顕微鏡はステージを回転させ薄片を回して観察するのに対して、この装置は2枚の偏光板のほうを回転させます。

この装置の目的は「薄片全体を撮影すること」ですので、薄片が回転してしまうと。それに合わせてカメラも回転させなければなりません。装置を大がかりにしないで済むように、発想を転換して偏光板を回転させることにしたのですね。


顕微鏡で一度に観察できる範囲はミリメートル単位ですので、薄片全体を1枚の画像にするには。何枚もの写真をパネル状に並べて合成する必要があります。合成できたとしても、1枚の綺麗な絵になるとは限りません。でも、この装置であれば、1枚パシャっと撮影するだけなので一瞬です。それだけでなく、偏光板が回転することで我々のような玄人には感涙ものの、目から鱗の便利さが実現されていました(詳しくはマニアック過ぎるので省略)。


船内であまりに感動したので「是非とも研究室に1台欲しい!」ということで、日本国内のカメラ撮影台のメーカーさんにお願いして、JOIDES Resolution号の撮影装置とほぼ同じ仕組みのものを作っていただきました。地味なんですが、スゴイやつです。


研究室に導入したいという方は、「お問い合わせ」フォームより筆者宛にご連絡ください。


撮影の様子と撮影した薄片

試料は海底から採取した玄武岩。偏光を使って観察する状態で、薄片全体(横幅約5cm)を撮影することが可能です。ORCeNGでは、デジタル一眼レフカメラを用いて撮影しています。

この記事を書いた人
町田 嗣樹 (上席研究員)
Shiki Machida

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