外部資金

研究活動スタート支援「海洋生態系変遷から紐解く地球環境変動と高品位レアアース泥生成のリンケージ解明」(2021年度ー2022年度)

研究の概要

本研究は、新しいレアアースの資源として注目される深海の泥「レアアース泥」がどのように形成されたのかを明らかにすることで、将来重点的に探査を行うべき海域を明らかにすることを目的としています。


これまでの研究により、レアアース泥に含まれる粒子の中でも特に魚類の歯や骨片にレアアースが高濃度で含まれていることが分かりました。これは、魚類の生産性が高品位なレアアース泥の形成に密接に関与していることを示唆しています。しかし、レアアース泥が堆積する遠洋海域において、どのような環境下で魚類の生産性が高まるのかは十分に理解されていません。


そこで本研究では、太平洋の様々な海域で採取されたコアを対象に、まず (A) 海水中に極微量含まれる元素「オスミウム」の同位体比分析を行い、堆積年代を決定します。さらに、(B) 魚類の歯の化石「イクチオリス」を網羅的に観察することによって、各コアにおいて魚類の生産性がどのように変動していたかを調べます。これらの情報を統合することで、(C-1) 魚類の生産性が高まる条件を解明し、様々な時代おいてどこに魚類の生産性が高い海域が存在したかを考察します。そして、(C-2) それらが地球のプレート運動によってどのように移動したかを解析し、いま現在の海洋底においてどこに魚類の骨片を豊富に含む堆積物層が見られるかを推定します。この魚骨片の濃集層が海底面下浅部に存在している海域こそが、今後重点的な探査を実施すべき「有望海域」になると考えられます。


【キートピック】

AI を用いた効率的な化石観察手法の確立

従来の手法では、顕微鏡を覗きながら堆積物中の粒子から化石を探し出し、それら一つ一つについて丁寧に観察と特徴記載を行うことが必要でした。これでは、本研究で対象とする膨大なコア試料で網羅的に化石観察を行うことは困難です。


そこで本研究では機械学習(AI)を導入することで、化石観察のプロセスを格段に効率化します。機械学習の中でも「物体検出」と呼ばれる手法を用いることにより、顕微鏡で撮影した画像から、どこに何の粒子があるのかを自動で判断させることができます。これにより、多数のコアで膨大な試料を対象とした化石観察ができるようになります。


研究課題番号:21K20354

研究代表者:見邨和英

研究期間:2021年度-2022年度

直接経費:2,400千円