外部資金

基盤研究 (A) 「海底マンガン酸化物鉱床とレアアース泥の一体解析による統一的成因の解明」 (2017年度– 2021年度)

研究課題番号:17H0361

研究代表者:中村謙太郎

研究分担者:安川和孝臼井 洋一町田 嗣樹大田 隼一郎藤永 公一郎 

研究期間:2017年度– 2021年度

直接経費:32,400千円

 

【本研究課題の概要】

 現在の海洋底には、「海底熱水鉱床」、「コバルトリッチクラスト」、「マンガンノジュール」、「レアアース泥」という4種類の海底鉱物資源が知られており、次世代の金属資源として注目されています。日本の排他的経済水域(EEZ) 内にも、これら4種類すべての海底鉱物資源が存在することが確認されており、資源に乏しいとされてきた我が国を資源大国に変貌させる切り札として大いに期待されます。海底鉱物資源の実開発に際しては、まず分布と資源量を正確に把握する必要がありますが、電磁波を利用できない海底をくまなく探すことは、最先端の技術をもってしても不可能なのが現状です。そこで、その探査には「成因からの探査海域の絞り込み」が重要となります。ところが、現時点ではいずれの海底鉱物資源についても、その成因は完全には解明されていないために、開発対象となる高品位資源の分布を絞り込めてはいません。このような中、私たちはこれまでの予察的な研究から、これら三つの海底鉱物資源が成因的に密接に関わっていることに気付きました。そして、これらの三つの資源の生成と分布を支配する共通因子の存在が見えてきました。これら三つの海底鉱物資源の生成機構とそれら相互の成因的関連性を明らかにすることができれば、これらの資源すべての成因を統一的に理解できると考えられます。

 本研究課題では、上記の着想を基に「コバルトリッチクラスト」、「マンガンノジュール」、「レアアース泥」という3つの海底鉱物資源について、化学組成および同位体組成を明らかにするとともに、高精度の生成年代決定を行います。そして、得られたデータの解析によってそれぞれの資源の形成年代および形成プロセスを解明するとともに、それらを統合的に考察することで3つの海底鉱物資源の成因を統一的に理解することを目的としています。

 

【本研究課題の成果】

 本研究課題により、レアアース泥、マンガンノジュール、コバルトリッチクラストについて、それぞれその形成に関与するプロセスの解明および形成された年代を詳細に明らかにすることができ、初めて3つの資源を一体的に考察することが可能になりました。その結果、レアアース泥のうち最も広範囲に分布し、かつ高濃度の第一レアアースピークの形成と、マンガンノジュールの形成開始、およびコバルトリッチクラストの組成が大きく変化する時代が、始新世後期から漸新世初期といずれの資源についても一致していることがわかりました。強い深層海流がイベント的にもたらされることで、これら3つの海底鉱物資源の形成に重要な役割を果たすことが初めて明確に示されました。

 

【本研究課題に関連する代表的な論文】

  • Tanaka et al. “Secular variations in provenance of sedimentary components in the western North Pacific Ocean constrained by Sr isotopic features of deep-sea sediments.” Geochemistry Geophysics Geosystems 23, e2021GC009729 (2022). https://doi.org/10.1029/2021GC009729
  • Nakamura et al. “Three-Dimensional Structural Analysis of Ferromanganese Nodules from the Western North Pacific Ocean Using X-ray Computed Tomography.” Minerals 11, 1100 (2021). https://doi.org/10.3390/min11101100
  • Machida et al. “Fine‐scale chemostratigraphy of cross‐sectioned hydrogenous ferromanganese nodules from the western North Pacific.” Island Arc 30, e12395 (2021). https://doi.org/10.1111/iar.12395
  • Machida et al. “Intermittent Beginning to the Formation of Hydrogenous Ferromanganese Nodules in the Vast Field: Insights from Multi-Element Chemostratigraphy Using Microfocus X-ray Fluorescence.” Minerals 11, 1246 (2021). https://doi.org/10.3390/min11111246
  • Ohta et al. “Geological features and resource potential of deep-sea mud highly enriched in rare-earth elements in the Central Pacific Basin and the Penrhyn Basin.” Ore Geology Reviews 129, 104440 (2021). https://doi.org/10.1016/j.oregeorev.2021.104440
  • Ohta et al. "Fish proliferation and rare-earth deposition by topographically induced upwelling at the late Eocene cooling event." Scientific Reports 10, 9896 (2020). https://doi.org/10.1038/s41598-020-66835-8
  • Tanaka et al. "Chemostratigraphy of deep-sea sediments in the western North Pacific Ocean: Implications for genesis of mud highly enriched in rare-earth elements and yttrium." Ore Geology Reviews 119, 103392 (2020). https://doi.org/10.1016/j.oregeorev.2020.103392 
  • Tanaka et al. “Chemostratigraphic Correlations of Deep-Sea Sediments in the Western North Pacific Ocean: A New Constraint on the Distribution of Mud Highly Enriched in Rare-Earth Elements.” Minerals 10, 575 (2020). https://doi.org/10.3390/min10060575
  • Yasukawa et al. "Statistic and Isotopic Characterization of Deep-Sea Sediments in the Western North Pacific Ocean: Implications for Genesis of the Sediment Extremely Enriched in Rare Earth Elements." Geochemistry Geophysics Geosystems 20, 3402-3430 (2019). https://doi.org/10.1029/2019GC008214
  • Mimura et al. "Significant impacts of pelagic clay on average chemical composition of subducting sediments: New insights from discovery of extremely rare-earth elements and yttrium-rich mud at Ocean Drilling Program Site 1149 in the western North Pacific Ocean." Journal of Asian Earth Sciences 186, 104059 (2019). https://doi.org/10.1016/j.jseaes.2019.104059
  • Azami et al. “Rare earth elements and yttrium (REY) variability with water depth in hydrogenetic ferromanganese crusts.” Chemical Geology 493, 224-233 (2018). https://doi.org/10.1016/j.chemgeo.2018.05.045