外部資金

基盤研究 (S) 「画期的な海底鉱物資源としての含金属堆積物の包括的研究」 (2010年度– 2014年度)

研究課題番号:22226015

研究代表者:加藤泰浩

研究分担者:岩森光中村謙太郎

研究期間:2010年度– 2014年度

直接経費:108,400千円

2013年度 研究進捗評価:A

2015年度 研究進捗評価(検証):A+

 

【本研究課題の概要】

 レアアースは、Nd-Fe-B 磁石、蛍光体など我が国の最先端技術産業に不可欠な元素であり、その需要の急増により新たな供給源の確保が火急の国家的課題となっています。こうした状況の中、私たちは、レアアースを豊富に含有した『深海底含金属堆積物』が太平洋に広範に分布していることを発見しました。この新規資源は、従来の海底鉱物資源(マンガンノジュール・クラスト鉱床,海底熱水性硫化物鉱床)の総資源量を3 桁も上回る膨大なものです。そして、①レアアース含有量が非常に高い、②層厚がおそらく数十メートルの堆積物であり、資源量が膨大かつ探査が容易、③開発の障害となるウラン、トリウムなどの放射性元素の含有量が低い、④希酸によりほとんど全ての有用元素が容易に回収できるなど、資源としてまさに理想的なものです。この新発見の資源は公海上に存在していますが、国際海底機構への鉱区申請を経て我が国が開発できる可能性がある資源であり、国家的課題であるレアアース資源の安定確保へ向けた切り札となることが期待されます。

 本研究課題では、この新規の資源について、太平洋全域における分布状況、レアアースの含有量および存在状態を包括的に把握し、資源ポテンシャル評価と有望海域の選定を行い、海底資源開発へ向けた積極的な政策提言を行うことを目的としました。

 

【本研究課題の成果】

 本研究課題では、当初の目的である「レアアース泥の分布状況と、レアアースの含有量および存在条件の包括的把握」、「資源ポテンシャル評価と実開発に向けた有望海域の選定」、「開発へ向けた積極的な政策提言」について、当初の目標をはるかに超えた大きな成果を上げることができました。今後は本研究で得られた資源情報を政府機関や企業と共有しつつ、南鳥島レアアース泥開発の実現を目指していきたいと考えています。

 

【本研究課題に関連する代表的な論文】

  • Takaya et al. "Chemical leaching of rare earth elements from highly REY-rich mud." Geochemical Journal 49, 637–652 (2015). https://doi.org/10.2343/geochemj.2.0373 
  • Yasukawa et al. "Rare-earth, major, and trace element geochemistry of deep-sea sediments in the Indian Ocean: Implications for the potential distribution of REY-rich mud in the Indian Ocean." Geochemical Journal 49, 621-635 (2015). https://doi.org/10.2343/geochemj.2.0361
  • Nakamura et al. "REY-Rich Mud: A Deep-Sea Mineral Resource for Rare Earths and Yttrium." Handbook on the Physics and Chemistry of Rare Earths 46, 79-127. (2015). https://doi.org/10.1016/B978-0-444-63260-9.00268-6
  • Kashiwabara et al. "Determination of host phase of lanthanum in deep-sea REY-rich mud by XAFS and μ-XRF using high-energy synchrotron radiation." Chemistry Letters 43, 199-200. (2014). https://doi.org/10.1246/cl.130853
  • 髙谷ほか "化学リーチングによるレアアース泥からのレアアース回収方法の検討-レアアース泥の開発と工学的利用に向けて-." Journal of Journal of the Mining and Materials Processing Institute of Japan 130, 104-114. (2014). https://doi.org/10.2473/journalofmmij.130.104 
  • Yasukawa et al. "Geochemistry and mineralogy of REY-rich mud in the eastern Indian Ocean." Journal of Asian Earth Sciences 93, 25-36 (2014). https://doi.org/10.1016/j.jseaes.2014.07.005
  • 大田ほか "ハワイ南東方沖におけるレアアース泥の資源ポテンシャル評価." 資源地質 62, 197-209. (2012). https://doi.org/10.11456/shigenchishitsu.62.197
  • Kato et al. "Deep-sea mud in the Pacific Ocean as a potential resource for rare-earth elements." Nature Geoscience4, 535-539. (2011). https://doi.org/10.1038/ngeo1185